農は物を運ぶ仕事がとても多い。堆肥や肥料、さまざまな道具、そして収穫物。どれも重い物ばかりだ。今は軽トラックをはじめ、さまざまな運搬車があるが、昔はどうしていたのか。時には家畜に背負わせたり荷車を引かせたりしたが、人が背負い、後にはリヤカーを引くなど、人力で運ぶことが多かった。 私が生まれ育った雪国の冬はそれもむずかしい。冬は荷車やリヤカーは使えなかったし、深い雪の中では背負って運ぶことも容易ではなかった。雪国特有の運搬手段は橇 (そり) だった。 山橇(やまぞり):肩にかける引き綱で引く組み立て式の橇。使い終わった春には解体して収納した。丈夫な木組みで、こうした橇を作る職人の存在も必須だった…