自殺博士:大下宇陀児 1959年(昭34)同光社出版刊。 1956年(昭31)5月、雑誌「小説倶楽部」増刊号再録「走る死美人」 風采の上がらない元警察署長の私立探偵・杉浦良平と助手の影山青年の活躍する短篇シリーズから6篇を収める。いずれも戦前から戦中にかけて発表されたもの。主役の探偵の下品な笑い声をはじめ、老体の醜悪さを事あるごとに描いているのに特色がある。「儂」(わし)という主語を使うのも珍しい。(下記に引用) 作品では「昆虫男爵」と「蛇寺殺人」が充実していた。また「走る死美人」は、深夜の晴海通りを白い馬が半裸体の女性を乗せたまま築地の方角へ疾駆するというエキセントリックな光景が印象的だが、…