世界はすべて ひとりの太郎のためにある 世界はすべて ひとりの花子のためにある おほきな声でそれを言へばおれは殺されてしまふ けれどほんたうのことは/結局ほんたうだ 正義の発端はおれにある/人道の発端はおれにある それを知らないものをおれは信じない 吉本隆明〈発端〉「日時計篇(下)」より 「岡田睦作品集」(宮内書房)読了。 現在入手可能な講談社文芸文庫の「明日なき身」と併せて読むと、より味わいが増す。ぼくは図書館で単行本「乳房」を読んだので、この三冊を読むと、岡田睦の後半生を私小説で辿ることができる。 三人目の妻が家を出て、妻名義のその家を追い出され、郊外のアパートで生活保護と福祉保健法32条…