私のような一般読者にとっては、専門分野の新しい知見によって歴史の理解をアップデートしてくれるこういった新書はありがたい。 従来、16〜18世紀ヨーロッパの近世史は、それまでのローマ教皇やローマ帝国による広域秩序を覆そうとする宗教改革やイタリア戦争によって始められ、数々の紛争を経てウェストファリア条約に典型的に現わされるような主権国家体制が作られていく、という筋書きが主だった。本書はそのような従来の見方に対し、「複合国家」(本書、p12)の興亡という新しい視点を加え、解像度を高めてヨーロッパ近世史を地域横断的に描き出す。本書によればヨーロッパ近世史は、宗教改革、地域経済の発展、海外植民地の建設、…