岩波現代文庫の『臨床家 河合隼雄』という本の、冒頭におさめられている『家を背負うということ』を、僕はもう何度も読んでいる。すでに十回は読んだと思う。 これはある女性の治療の記録である。岩宮恵子という臨床心理士による女性の面談記録と、その治療の過程を解説した河合隼雄の文章で構成されている。 この話はカフカの『変身』と比較すると非常に面白い。『変身』については以前に次の記事で解説した。 riktoh.hatenablog.com 面白いと思うのは、グレゴールとこの女性の悩みは本質が共通しているのに、しかし話の結末が正反対であることだ。 まず共通点を述べると、二人とも仕事を辞めている。彼らは共に無気…