重松清の『峠うどん物語』上下巻を読んだ。2011年に講談社より刊行された連作短編集だ。「かけ、のち月見」「二丁目時代」「おくる言葉」「トクさんの花道」「メメモン」「柿八年」「本年も又、喪中につき」「わびすけ」「立春大吉」「アメイジング・グレイス」の10話と序章から構成されている。峠のてっぺんにある祖父母が営むうどん屋の屋号は「長寿庵」だったが、孫娘の〈よっちゃん〉が生まれたころ、道路を挟んだ向かいに市営の斎場が建ったのを機に「峠うどん」に変えた。父母はともに小学校の教諭で、〈よっちゃん〉は中学2年生になっていた。〈よっちゃん〉は祖母にお願いされ時々店を手伝いに行くが、父も母も反対だった。店の客…