◎新渡戸仙岳『岩手に於ける鋳銭』(昭和九年)中「栗林銭座」を読む(1) 前回の文献検討では、南部史談会における「降点盛字銭」(「下点盛」)は、明治から大正期に議論済みであった見解が、昭和戦後の南部銭の分類・解釈にはなんら反映されていないことを示した。 簡単に言うと、「盛岡藩鋳銭」として掲示できるこの品は、最初の1枚だけであり、これは現存品とは型(書体)が異なるから、他は総て派生品である、ということになる。 これと同様のケースが複数存在しているが、「かつての見解が反映されぬ要因」を探った結果判明したことは、「誰も原本を読んでいない」ということだった。 南部貨幣の領域でとりわけ重要なものは、新渡戸…