著者の平井和子氏は、一橋大学名誉教授の吉田裕氏のゼミ生を経験し、上野千鶴子氏や蘭信三氏と共に著書「戦争と性暴力の比較史へ向けて(岩波書店)」で協同研究を行った一人である。それ故に、近現代史を多面的に研究しつつ、戦時性暴力やジェンダー社会科学研究センターでの活動も通じて、本書の出版となった。 戦前戦後の日本は、男性リーダー達によって「危機に際して女性を差しだす」暴力構造であった事を鋭く指摘する。1945年8月15日の敗戦後わずか3日目には、日本の誇り「大和撫子」を守らんとする政府・警察は、占領軍向けの性慰安施設(RAA)を全国各地に建設する。「大和撫子」を守るとしつつも、結局は女性が供され、かつ…