平谷美樹氏の虎と十字架 南部藩虎騒動を読んだ。まさにタイトルの通り「虎」と「十字架」の物語だった。慶長十二(1607)年南部利直は駿府の家康に拝謁し二匹の虎を下賜された。そのうちの一頭が寛永二(1625)年冬に死んだ。この時この小説にあるように虎が籠から逃走したという話もあるようだが、詳細は不明。また、南部利直の次男政直が寛永元年(1624年)に急死しており(毒殺)、この二つの史実に、隠れキリシタンを絡めて作り上げたのが本書である。物語のスタートは裕福な家の内儀と侍女が山中で何者かに襲われるところから始まり、そして虎が虎籠から抜け出した騒ぎへとすぐに切り替わる。実はこの時虎籠には最初の所に登場…