女房 「いといたうまめだちて。 まだきに、やむごとなきよすが定まりたまへるこそ、 さうざうしかめれ」 女房 「されど、さるべき隈には、よくこそ、隠れ歩きたまふなれ」 など言ふにも、 思すことのみ心にかかりたまへば、まづ胸つぶれて、 「かやうのついでにも、人の言ひ漏らさむを、 聞きつけたらむ時」 などおぼえたまふ。 ことなることなければ、聞きさしたまひつ。 式部卿宮の姫君に朝顔奉りたまひし歌などを、 すこしほほゆがめて語るも聞こゆ。 「くつろぎがましく、歌誦じがちにもあるかな、 なほ見劣りはしなむかし」 と思す。 守出で来て、 灯籠掛け添へ、灯明くかかげなどして、 御くだものばかり参れり 源氏 …