前稿(2)と(3)では「まっ白な貝細工のやうな百合の十の花のついた茎」が聖なる花であり「強い信仰心」を象徴しているということを記した。本稿(4)では,なぜ,この信仰心を象徴する百合の花を〈はだしの子供〉は10銭で売ろうとし,また〈大蔵大臣〉は代価を硬貨でなく自分のルビーの首飾りで支払おうとしたのかについて考察する。 童話の中で「四又の百合」が〈はだし子供〉から国王の臣下である〈大蔵大臣〉に売られ,さらに国王に渡される様子が以下のように記載されている。 大臣は進みました。 「その百合をおれに売れ。」 「うん売るよ。」子供は唇(くちびる)を円くして答へました。 「いくらだ。」大臣が笑ひながらたづね…