はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と十 「ナゲクオヤ ガ イナクナルコトヲ ネガッテイマス」 妙な勘違いをされては困るとでも思ったのか、「家族」やら「親子」やらといったものに、偏った政治的な、歪んだ宗教的な、そんな怪しげなモノを絡ませるつもりは毛頭ない、と、前置きした上で、Aくん、おそらく、テレビのドキュメンタリー番組かナニかで見たのだろう、ある母親のコトをユルリと語り始めたのである。 「『敵』によって、最愛の息子の命が奪われてしまった、ある国の、ある母親の、ある言葉が忘れられないんだよな~」 敵? 母親? 言葉? 「その『敵』。国、というよりは、むしろ、テロリストと言うべきだろうな。罪な…