引越しは、自らを解体する行為のようである。部屋と自己はやはり、繋がっている。壁掛けやポストカードを仕舞うたびに、心の奥底が冷えていく感じがする。自分の家なのに、自分の家と思えない。かつての暖かさはとうの昔に失われてしまったようだ。 引越しの荷造りと旅行のパッキングを同時進行で行い、憂鬱になりながらも北に行く準備を整えた。 この地から北国に行くのは3回目。よく考えてみれば、北にばかり行っている。幼少期、親に連れられ、足繁く行っていたのだから、三つ子の魂百までということなのだろうか。亜寒帯の植物を求めてブラキストン線を越えたのである。 ー 飛行機に乗る。離陸直後に地表を見下ろすと、自宅や大学が見え…