はじめに:応用科学としての臨床心理学のかたち 本記事では「物語としての心理療法」シリーズの第4回として、心理療法が自然科学の枠組みにどう取り込まれ、そしてどのような文化的意味を持っているのかを整理してみました。 --- 自然科学に寄せられた心理療法 フロイトら心理療法の創始者たちは、自らの理論を自然科学に準拠したものとして成立させようと努力していました。自然科学とは、「対象を正確に知る」ことを目的とする学問です。 しかし心理療法は、単なる知識の探究だけでなく、実際に人間を支える技術を伴って発展してきました。やがて心理療法は、人間社会に役立つ知見や方法を提供する“応用科学”の一領域として位置づけ…