忘れ残りの記 (吉川英治歴史時代文庫) 作者:吉川 英治 講談社 Amazon 歴史小説家・吉川英治の自叙伝。波乱万丈の人生の、その青春を主に綴る。 小説家というものは、勝手に恵まれた存在だと思っていた。勉学に時間を費やすことが出来、さらにその成果を作品として売ることができる。著者の生きた時代、出版社とコネを持つだけでも恵まれた環境が必要だったのではないだろうか。 ・・・というイメージをガラリと変えてくれる作品だった。確かに著者は恵まれた家庭に生まれたようだが、その後の4半世紀はまさに波乱万丈だった。酒に溺れる父のために家は零落し、その日の食べ物にも困るほどに追い込まれていく。病床に倒れる父、…