「恋の幽霊」を読んだ。読むのを止められず、気づけば日を跨いでいた。 誰もがいつだって持っている、混ぜこぜ、と平たく書くしかない感情のもつれと重なり。ほんの些細な、例えばほんの少しの視線の下がり方や、語尾の音質、そんな機微の中に含まれてしまう混乱した感情の蠢きが、溜まり溜まって、繋ぎ繋がれ、最後には、冷たい関東の冬の夜空のような、キンっとした厳しいながらも、カラッとしたようなところもある心持ちにようやく辿り着く。長い長い旅を見ているようだった。なんのこっちゃって話だが、主人公たちの間の濃密な空気がねっとりと熱気を帯びたまま、いつの間にか遠いところに連れて行く(物理的には近い空間で)、という感じ(…