「来週の県大会予選、じゅんちゃんのお父さんお母さんも応援に来られるんでしょ?」 「い、いえ・・・」 「あら、お仕事?」 「父と母は僕が4才の時に亡くなりました」 「・・・」 「あら、ごめんなさい。嫌なこと聞いちゃって」 私の父は誰もが知るネパールのエベレストや、世界一危険な山と言われるアンナプルナの登頂にも成功しているプロの登山家であり、母親も山岳写真専門のプロカメラマンであった。あるとき母が高山植物の写真を撮りたいといったことから父と二人で南アルプスの北岳に登ることになったのだが、幻の高山植物「キタダケソウ」を見ることなく雪崩に巻き込まれ八本歯から約500メートル下った大樺沢で亡くなっている…