「あなた! 今夜行ってもいいか?って!」 「誰が?浩太か?」 「違いますよ、浩太はもう半年ばかり電話もしてきません!」 「じゅんちゃんですよ!」 「準一朗か! 聞くまでもないだろう! 待ってると言ってやれ!」 「もうそう言いましたよ!」 オメガ建築設計事務所の山野辺浩太とは中学校からの親友である。 クラスは違っていたがクラブ活動では同じバスケットボール部であり、当時中学一年生で身長が170センチを超えていたのは私と山野辺の二人だけであった。私はバスケットボールが好きだったわけでもなく、ボールすら触ったことがなかったのだ。 本当は運動系のクラブ活動ではなく文化系のクラブに「ガリ版部」というのがあ…