ふと見ると、窓の向こうに誰かが立っていた。 黒い帽子をかぶった男の顔が、凹凸ガラスにぼんやり透けている。窓の向こう側はずいぶん低いらしく、顔から肩あたりまでしか見えなかった。 具合のわるいことに、窓には鍵がかかっていなかった。鍵をかけるより早く、相手が窓に手をかけた。すすっと窓が開く。男は、きたない肌をした外国人だった。いまどき誰もかぶらないような古くさい黒い帽子をかぶり、横縞の服を着ている。白黒の横縞、それもアニエスベーふうの。 こいつ、あれだ。表情のない顔を見て、すぐにぴんときた。13日の金曜日だ、映画の。 相手が殺人鬼なら、いよいよ中に入れるわけにはいかない。だけど金曜日の手が邪魔で、鍵…