うき世の意味については、歴史的に次のような変遷があった。辞典を引用すると長くなるので、要約しておく。 本来は、形容詞「憂(う)し」の連体形「憂き」に名詞「世」の付いた「憂き世」であった(仏教的厭世観)が、漢語「浮世(ふせい)」の影響を受けて、定めない人世や世の中をいうように変化し、近世初期から、現世を肯定し、享楽的な世界をいう「浮き世」と書かれるようになった。 うき世には門させりとも見えなくになどか我が身の出でがてにする 古今集・平 貞文 *「この憂き世には、門があって閂(かんぬき)がさしてあるとも見えないのに、なぜ我が身は家から出にくいのだろう。」 鬱状態に陥っていた平中が、怠慢を理由に衛府…