あらすじ 成島柳北 福沢諭吉 佐倉宗五郎 長沼事件 明治14年の政変 『情海波瀾』は戸田欽堂の政治小説。 タイトルに「はじまり」とつけたのは明治文学の研究者柳田泉がそう言っているからで、筆者に定見があるわけではない。へりくつを言えば、一番とか嚆矢とか白眉とか、芸術や文学はすぐに決めつけたがるから、そう、ムキになるものでもあるまい、というくらいのつもりである。 さて、一般には「政治小説」と云った場合、明治8年の民選議員設立の建白から全国に拡大過熱していった自由民権運動とその思想を扱った小説のことを指す。政治的な宣伝、プロパガンダ、あるいは民権思想の啓蒙を目的とした。それは平易な言葉づかいと文体に…