9月、国立劇場小劇場。第3部に行って来た。 伊賀越道中双六は、コロナ禍になるまでは歌舞伎でも「沼津」の段がよくかかっていた。 私が忘れられない歌舞伎の「沼津」は、2019年の秀山祭での「沼津」。吉右衛門が十兵衛。平作歌六。安兵衛又五郎、お米雀右衛門。歌昇、種之助夫婦に連れられた綜真クンが初お目見えしたのも懐かしい。この時私は、1階2等席の一番前で吉右衛門と握手をした。ほっこりとやわらかく、でも意外と冷たいお手だった。 播磨屋総出演のこの時の「沼津」は、まるで夢のような風景で心にとどまっている。吉右衛門はこの時も途中で休演となっている。ずっと具合が悪かったのをだましだまし、舞台に立ち続けていたの…