【はじめに】 「片腕」を三島由紀夫が絶賛しているので、新潮文庫の『眠れる美女』を購入したが、その中で「散りぬるを」(1933)がもっとも面白かったのでこれを取りあげることにした。代表作の「雪国」(1948)よりかなり早い戦前の同人誌時代の作品。ノーベル文学賞受賞は1968年。 5年前に殺人事件があって滝子と蔦子という若い女性が殺される。二人は作家の内弟子になって二人で一軒家に住んでいた。滝子は艶麗な23才、蔦子は清麗な21才、ともに文学に志があった。山辺三郎という近所に住む25才の男が二人と顔見知りで、ある晩二人を訪ねて来て話し込み殺してしまう。理由はよく分からない、冗談で驚かそうとするうちに…