秋の暮みんな帰って終ひけり 大出岩子 (p.11) あれだけにぎやかだったのに、みんな帰ってしまった。事実をそのまま 記述した「写生」の極致のような句。しかし、突然の手持無沙汰と心に できた空洞の大きさにただ呆然とする様子がみごとに表現されている。 「秋の暮」という季語が秀逸であり、それに呼応した「終ひけり」の切れ字 によって素晴らしい韻文となっている。 「橡」十一月号の沖崎青波作 燕去り元の独りに戻りけり と技巧、句意ともによく似ているように思う。 (2023/12/21 改訂) 黒柿の卓の焦げ色夏行けり 北山秀明 (p.13) 黒柿の一枚板の卓だろうか?その焦げた色が以前と微妙に違って少し…