59.『明暗』に向かって お延「女下駄」事件(2)――お延の勘違い(つづき) [漱石「最後の挨拶」番外篇] 16.お延「女下駄」事件(承前)―― お延の勘違い 津田がお時を追い払ったあとも、津田とお秀のバトルは留まるところを知らない。 そして「……彼は何んな時にでもむかっ腹を立てる男ではなかった。己れを忘れるという事を非常に安っぽく見る彼は、また容易に己れを忘れる事の出来ない性質に父母から生み付けられていた。」(97回)とまで書かれていたにもかかわらず、津田は(小林の妹のお金さんと比べても)あまりにうるさいお秀につい我を忘れて「……馬鹿め」「黙れ」(102回)とまるで漱石になったかの如く激昂す…