賢治は,地質時代(古生代,中生代)という太古の植物や動物を扱った作品を数多く残している。中でも,『春と修羅(第二集)』の「「春」変奏曲」(1924.8.22 ;1933.7.5)という古代シダを扱った詩(心象スケッチ)がとてもユーモラスであり,また同時に賢治の悲劇的な深層意識をうまく表現しているようにも思えるので紹介してみる。 この「「春」変奏曲」の内容は,プラットフォームで列車を待っている少女の一人がドロヤナギ(Populus maximomiczii 泥柳;ヤナギ科の高さ20~30メートルにもなる落葉高木)の花粉を吸いこんでしまい,今で言う花粉症を発症してしまった状況の中で,いつしか古代シ…