朗読:谷崎潤一郎「人面疽」 www.youtube.com この特異な小説「人面疽」は、まるで現代のAIテクノロジーを前提として作られた映画用シナリオのノベライズのようだ。そこが気になって、いささか調べてみた。 谷崎の映画製作に対する情熱と天才は本物だ。戦前の映画黎明期に自ら(主にシナリオとコンテ書きとして)参加した4本の先駆的映画製作に全身全霊を傾けた。しかし、谷崎の映画人としての才能は、十二分にあったにもかかわらず、様々な時代的制約に阻まれ具現化しきれなかった。一言でいうなら、少し早く生まれ過ぎたのだ。谷崎はやむをえず映画への情熱と才能のすべてを小説の中に注ぎこむほかなかった。かれの天才は…