ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(6) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.45~)である。 是非もない事実 五感が捉えることのできる証拠に基づく経験的真理は、科学研究の領分に属する。そして、なぜ世界が存在するのかという問いは、科学の手に負えないと一般に認められていた。結局のところ、科学的な説明は現実の一部を、ほかの部分の観点から説明できるだけで、現実を全体として説明することは決してできない。従って、世界の存在は是非もない事実でしかないのだ。B.ラッセル(1872-1970)は、こうした哲学的な共通認識を次のように要約した。「宇宙はただあり、それがすべてだと言わざるを得ない」。 …