🌸【古文】 「宮より、 明日にはかに御迎へにとのたまはせたりつれば、 心あわたたしくてなむ。 年ごろの蓬生を離れなむも、さすがに心細く、 さぶらふ人びとも思ひ乱れて」 と、言少なに言ひて、 をさをさあへしらはず、 もの縫ひいとなむけはひなどしるければ、参りぬ。 君は大殿におはしけるに、 例の、女君とみにも対面したまはず。 ものむつかしくおぼえたまひて、 あづまをすががきて、 「常陸には田をこそ作れ」 といふ歌を、声はいとなまめきて、 すさびゐたまへり。 参りたれば、召し寄せてありさま問ひたまふ。 しかしかなど聞こゆれば、 口惜しう思して、 「かの宮に渡りなば、わざと迎へ出でむも、 好き好きしか…