化学のひとつ。炭素原子を有する化合物を合成したり、反応を解析したりする分野。但し二酸化炭素や一酸化炭素などは含まず、これらは無機化学の範囲となる。
有機化学の分野としては,有機合成化学,天然物全合成,創薬化学,有機金属化学,物理有機化学,生物有機化学,有機高分子化学などがある.
余談であるが、『有機』といったら、普通『有機化学』または『有機合成』のことをさすと思っていたが、とある場で「大学で有機を専攻している」と言ったところ、「有機って農業?」といわれた・・・。
カニッツァーロ反応は、有機化学の重要な反応の一つであり、医薬品合成においても応用されることがあります。今回は、その反応機構や特徴、そして薬学との関連について解説していきましょう。 カニッツァーロ反応とは? カニッツァーロ反応は、α-水素を持たないアルデヒドが、強塩基(例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム)の存在下で、酸化還元反応を起こし、カルボン酸塩と第一級アルコールを生成する反応です。 1853年にスタニズラオ・カニッツァーロによって、ベンズアルデヒドを水酸化カリウムで処理した際に、安息香酸カリウムとベンジルアルコールが得られたことから発見されました。 反応機構 カニッツァーロ反応は、以下…
ガッターマン反応とは? ガッターマン反応は、フェノール類またはそのエーテル類などの電子豊富な芳香族化合物を基質とし、**塩化水素とシアン化水素(またはシアン化亜鉛)**の存在下、塩化アルミニウムなどのルイス酸触媒を用いて、芳香環の活性化された位置にホルミル基(-CHO)を導入し、芳香族アルデヒドを得る反応です。 簡単にまとめると、 フェノール類またはそのエーテル類 + HCl + HCN (or Zn(CN)₂) AlCl3 芳香族アルデヒド という反応になります。 反応機構のポイント ガッターマン反応の反応機構を理解することは、反応の応用や副反応の抑制につながります。主なステップを見てい…
オゾン酸化・オゾン分解(Ozonolysis)とは? オゾン(O3)は、非常に反応性の高い酸素の同素体です。オゾン酸化・オゾン分解は、このオゾンを用いて、主にアルケンやアルキンといった不飽和結合を切断し、カルボニル化合物(アルデヒドやケトン)を生成する反応です。 反応の概要 オゾンとの反応: アルケンやアルキンに低温下でオゾンを反応させると、不安定な中間体である**モロゾニド(molozonide)**が生成します。 R1R2C=CR3R4+O3⟶モロゾニド 転位: モロゾニドは非常に不安定なため、速やかに転位し、より安定な**オゾニド(ozonide)**へと変化します。 モロゾ…
薬学生のための有機化学講座:知っておきたいウルフ転位 薬学部の皆さん、こんにちは!有機化学の反応機構は、まるで魔法のように分子が組み変わる様子を解き明かす鍵となります。今回は、そんな有機化学の中でも重要な反応の一つである「ウルフ転位」について、皆さんの学習に役立つよう解説していきます。 1. ウルフ転位とは? ウルフ転位(Wolff rearrangement)とは、α-ジアゾケトンを加熱または光照射することで、ケテンを経由してカルボン酸誘導体へと炭素骨格が一つ増える反応です。具体的には、カルボン酸の炭素鎖が一つ長くなる、あるいは環状化合物においては環が一つ大きくなる、といった変化が起こります…
YouTubeをはじめた理由にも関わる話ですが、少々長くなるので、興味のある方だけ読んでください。 自己紹介 私は、地元の国立薬学部に進学し、薬を創る研究がしたいと思っていたため、入学時から博士課程に進む予定でした。途中で薬剤師免許を取得しましたが、臨床は自分に合わないと感じ、有機化学が好きだったこともあり、研究の道を選びました。 博士課程修了後は、有名なバイオベンチャーに研究職として就職しました。ベンチャー企業を選んだのは、新薬創出の主流がベンチャーのシーズを活用する流れになっていたこと、そして何より新薬開発に携わりたかったからです。 予期せぬ出来事とキャリアの転換 しかし、入社して2ヶ月後…
ウォルフ・キッシュナー還元は、有機化学において、アルデヒドまたはケトンのカルボニル基 (C=O) をメチレン基 (CH₂) に変換する還元反応です。この反応は、特に医薬品合成において、複雑な分子構造を構築する上で非常に有用です。薬学生の皆さんにとって、この反応の理解は、医薬品化学の知識を深める上で重要となるでしょう。 反応機構 ウォルフ・キッシュナー還元は、ヒドラゾン中間体を経由して進行します。 ヒドラゾン形成: アルデヒドまたはケトンがヒドラジン (N₂H₄) と反応し、ヒドラゾンが生成します。 異性化: ヒドラゾンは、塩基触媒下でアゾ化合物へと異性化します。 窒素の脱離とプロトン化: 加熱…
ウィリアムソンエーテル合成は、アルコキシドイオンとハロゲン化アルキルを反応させてエーテルを合成する、有機化学において非常に重要な反応です。特に薬学においては、医薬品の合成や構造活性相関の研究において頻繁に用いられます。 反応機構 ウィリアムソンエーテル合成は、SN2反応機構に従って進行します。 アルコキシドイオンの生成: アルコールを強塩基(ナトリウムやカリウムなど)で処理し、アルコキシドイオンを生成します。 SN2反応: アルコキシドイオンがハロゲン化アルキルの炭素原子を求核攻撃し、ハロゲン化物イオンが脱離してエーテルが生成します。 反応のポイント ハロゲン化アルキルの構造: SN2反応は立…
アルント-アイステルト反応とは? アルント-アイステルト反応は、カルボン酸を1炭素伸長したカルボン酸誘導体を得るための反応です。具体的には、カルボン酸を塩化チオニルなどを用いて酸クロリドに変換し、ジアゾメタンと反応させてα-ジアゾケトンとした後、ウォルフ転位を経てカルボン酸誘導体へと変換します。 反応機構 酸クロリドの生成: カルボン酸と塩化チオニルを反応させ、酸クロリドを生成します。 α-ジアゾケトンの生成: 酸クロリドとジアゾメタンを反応させ、α-ジアゾケトンを生成します。 ウォルフ転位: α-ジアゾケトンを加熱または光照射することで、窒素が脱離し、ケテンを経由してカルボン酸誘導体へと転位…
アルブゾフ反応とは? アルブゾフ反応は、亜リン酸エステルとハロゲン化アルキルを反応させ、リン酸エステルやホスホン酸エステルを生成する化学反応です。この反応は、1898年にAugust Michaelisと1905年にAlexander Arbuzovによって発見され、有機リン化合物の合成に広く利用されています。 反応機構 アルブゾフ反応は、以下の3つの段階を経て進行します。 求核攻撃: 亜リン酸エステルのリン原子が、ハロゲン化アルキルの炭素原子を求核攻撃します。 四級ホスホニウム塩の形成: 求核攻撃により、四級ホスホニウム塩が形成されます。 脱アルキル化: 四級ホスホニウム塩からアルキルハライ…
SN1反応とSN2反応とは? SN1反応とSN2反応は、求核置換反応と呼ばれる有機化学反応の代表的なものです。どちらも、ある分子の一部分が別の部分と置き換わる反応ですが、反応機構や特徴が異なります。 SN1反応(単分子求核置換反応) 反応機構: 脱離基の脱離によりカルボカチオン中間体が生成 カルボカチオンへの求核剤の攻撃 特徴: 2段階反応 反応速度は基質濃度のみに依存(1次反応) カルボカチオン中間体を経由するため、立体化学が保持されない(ラセミ化) 3級ハロゲン化アルキルなど、安定なカルボカチオンを生成しやすい基質で起こりやすい 極性プロトン性溶媒中で起こりやすい SN2反応(2分子求核置…