化学のひとつ。炭素原子を有する化合物を合成したり、反応を解析したりする分野。但し二酸化炭素や一酸化炭素などは含まず、これらは無機化学の範囲となる。
有機化学の分野としては,有機合成化学,天然物全合成,創薬化学,有機金属化学,物理有機化学,生物有機化学,有機高分子化学などがある.
余談であるが、『有機』といったら、普通『有機化学』または『有機合成』のことをさすと思っていたが、とある場で「大学で有機を専攻している」と言ったところ、「有機って農業?」といわれた・・・。
クラプコ反応:医薬品合成における脱炭酸の強力なツール 薬学生の皆さん、こんにちは!今回は有機化学反応の中でも、医薬品合成において重要な役割を果たす「クラプコ反応(Krapcho reaction)」について、そのメカニズムと具体的な医薬品合成への応用例を交えながら詳しく解説していきます。 クラプコ反応とは? クラプコ反応は、β-ケトエステルやβ-ジカルボニル化合物、特にメチレン基に2つのエステル基が結合したマロン酸エステル誘導体などから、加熱条件下でエステル基の脱炭酸(カルボキシル基の除去)を伴ってアルキル基を導入する反応として知られています。 より正確には、ハロゲン化リチウム(LiCl, L…
薬学生のための有機化学:クライゼン転位を徹底解説! 皆さん、こんにちは!有機化学の学習、お疲れ様です。今回は、合成反応の中でも特に重要で、分子の骨格を一気に組み替えることのできる強力なツール、「クライゼン転位(Claisen rearrangement)」について、薬学生の皆さんに分かりやすく解説していきます。 「転位」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、この反応の本質を理解すれば、医薬品合成におけるその重要性が見えてくるはずです。 クライゼン転位とは?:基本を理解しよう クライゼン転位は、アリルビニルエーテル(allyl vinyl ether)を基質として、加熱することでγ,δ-不飽和カ…
薬学生のための有機化学:クライゼン縮合を徹底解説! 皆さん、こんにちは!有機化学の学習、お疲れ様です。今回は、カルボニル化合物の反応の中でも特に重要な「クライゼン縮合」について、薬学生の皆さんの視点から詳しく掘り下げていきましょう。 1. クライゼン縮合って何? クライゼン縮合は、エステルが関与する炭素-炭素結合形成反応の一つです。具体的には、塩基の存在下で、2分子のエステル、または1分子のエステルと1分子のケトン(またはアルデヒド)が反応して、β-ケトエステル(またはβ-ジケトン)を生成する反応を指します。 「エステル同士が縮合する」という点で、アルドール縮合と似ていると感じるかもしれません…
クネベナーゲル縮合:医薬品合成における重要性と薬害性への視点 クネベナーゲル縮合(Knoevenagel condensation)は、活性メチレン化合物とアルデヒドまたはケトンとの間で、塩基触媒を用いて進行する炭素-炭素結合形成反応です。生成物としてα,β-不飽和化合物が得られ、医薬品の合成において重要な役割を果たしています。 クネベナーゲル縮合の反応機構 クネベナーゲル縮合は、一般的に以下のステップで進行します。 活性メチレン化合物の脱プロトン化: 塩基(通常はアミン系塩基やアルコキシドなど)によって、活性メチレン化合物のα-水素が引き抜かれ、求核性の高いエノラートまたは類似のアニオンが生…
カニッツァーロ反応は、有機化学の重要な反応の一つであり、医薬品合成においても応用されることがあります。今回は、その反応機構や特徴、そして薬学との関連について解説していきましょう。 カニッツァーロ反応とは? カニッツァーロ反応は、α-水素を持たないアルデヒドが、強塩基(例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム)の存在下で、酸化還元反応を起こし、カルボン酸塩と第一級アルコールを生成する反応です。 1853年にスタニズラオ・カニッツァーロによって、ベンズアルデヒドを水酸化カリウムで処理した際に、安息香酸カリウムとベンジルアルコールが得られたことから発見されました。 反応機構 カニッツァーロ反応は、以下…
ガッターマン反応とは? ガッターマン反応は、フェノール類またはそのエーテル類などの電子豊富な芳香族化合物を基質とし、**塩化水素とシアン化水素(またはシアン化亜鉛)**の存在下、塩化アルミニウムなどのルイス酸触媒を用いて、芳香環の活性化された位置にホルミル基(-CHO)を導入し、芳香族アルデヒドを得る反応です。 簡単にまとめると、 フェノール類またはそのエーテル類 + HCl + HCN (or Zn(CN)₂) AlCl3 芳香族アルデヒド という反応になります。 反応機構のポイント ガッターマン反応の反応機構を理解することは、反応の応用や副反応の抑制につながります。主なステップを見てい…
オゾン酸化・オゾン分解(Ozonolysis)とは? オゾン(O3)は、非常に反応性の高い酸素の同素体です。オゾン酸化・オゾン分解は、このオゾンを用いて、主にアルケンやアルキンといった不飽和結合を切断し、カルボニル化合物(アルデヒドやケトン)を生成する反応です。 反応の概要 オゾンとの反応: アルケンやアルキンに低温下でオゾンを反応させると、不安定な中間体である**モロゾニド(molozonide)**が生成します。 R1R2C=CR3R4+O3⟶モロゾニド 転位: モロゾニドは非常に不安定なため、速やかに転位し、より安定な**オゾニド(ozonide)**へと変化します。 モロゾ…
薬学生のための有機化学講座:知っておきたいウルフ転位 薬学部の皆さん、こんにちは!有機化学の反応機構は、まるで魔法のように分子が組み変わる様子を解き明かす鍵となります。今回は、そんな有機化学の中でも重要な反応の一つである「ウルフ転位」について、皆さんの学習に役立つよう解説していきます。 1. ウルフ転位とは? ウルフ転位(Wolff rearrangement)とは、α-ジアゾケトンを加熱または光照射することで、ケテンを経由してカルボン酸誘導体へと炭素骨格が一つ増える反応です。具体的には、カルボン酸の炭素鎖が一つ長くなる、あるいは環状化合物においては環が一つ大きくなる、といった変化が起こります…
YouTubeをはじめた理由にも関わる話ですが、少々長くなるので、興味のある方だけ読んでください。 自己紹介 私は、地元の国立薬学部に進学し、薬を創る研究がしたいと思っていたため、入学時から博士課程に進む予定でした。途中で薬剤師免許を取得しましたが、臨床は自分に合わないと感じ、有機化学が好きだったこともあり、研究の道を選びました。 博士課程修了後は、有名なバイオベンチャーに研究職として就職しました。ベンチャー企業を選んだのは、新薬創出の主流がベンチャーのシーズを活用する流れになっていたこと、そして何より新薬開発に携わりたかったからです。 予期せぬ出来事とキャリアの転換 しかし、入社して2ヶ月後…
ウォルフ・キッシュナー還元は、有機化学において、アルデヒドまたはケトンのカルボニル基 (C=O) をメチレン基 (CH₂) に変換する還元反応です。この反応は、特に医薬品合成において、複雑な分子構造を構築する上で非常に有用です。薬学生の皆さんにとって、この反応の理解は、医薬品化学の知識を深める上で重要となるでしょう。 反応機構 ウォルフ・キッシュナー還元は、ヒドラゾン中間体を経由して進行します。 ヒドラゾン形成: アルデヒドまたはケトンがヒドラジン (N₂H₄) と反応し、ヒドラゾンが生成します。 異性化: ヒドラゾンは、塩基触媒下でアゾ化合物へと異性化します。 窒素の脱離とプロトン化: 加熱…