※7年前の記事を再掲(リサイクル)します。 1971年1月20日の日曜日の昼下がり。 上野で古美術商を営んでいた木村東介がいつものように店に出ると、娘が走り寄ってきた。 娘は血相を変えて「レノンが来てんのよ!」と叫んだ。 明治生まれの木村は、レノンを知らない。 「なんだい、そのレノンてえのは」 「あらお父さん! ビートルズのジョンレノンよ! 小野洋子さんも一緒に…浮世絵を見たいと言うの」 ジョンはその年の1月13日にお忍びで来日し、25日に帰国している。そのさなかに、上野の古美術店を覗いたというわけだ。 木村の顔は曇った。 精魂込めて蒐集した浮世絵を外人に見せる気にはなれない。日本の心ある人々…