2021年1月23日 明治末の生まれで、大正、昭和、平成と生きて活躍した女優・エッセイストの沢村貞子さんの本(名著)です。この人の文章はやさしく、やわらかく、わかりやすい。文章の専門家からもしばしば絶賛される文章です。 最初の本文まえがきにあたる「食と生活」の部分を引用します。 「人の心の中にひそむさまざまな欲のうち、最後に残るのは食欲―とよく言われる。 たしかにそうかもしれない・・・震災、戦災で辛(つら)い思いが続いたとき、そう思った。旅先で空襲にあい、やっと乗り込んだ汽車の中で見知らない人からいただいた一個のおにぎりのうまさ―終戦直後、大島絣(がすり)の着物と取り替えてもらった一升の小麦粉…