2021年8月21日 物語は大正3年の冬、山形県の月山(がっさん)山麓から始まります。山中で獣を追うマタギの暮らしを題材に、東北地方の自然と男の生き様がドラマティックに描かれ、はじめからどんどん物語に引き込まれました。 著者の熊谷達也氏は1958年仙台市生れ。63歳。この『邂逅の森』で山本周五郎賞と直木賞をダブル受賞しました。 例えば、雪山の描写にしても、狩猟の場面の描写にしても、緻密で具体的で、全くマタギというものについての知識がない我々にもよく理解できる描き方です。そして獲物であるアオシシ(ニホンカモシカ)やツキノワグマの生態の描写もいい。マタギがどのようにして獲物を仕留めるのか、その場面…