武士の死に対する覚悟が、最も分かり易いのが辞世の句ではないでしょうか。そこで、辞世を取り上げてそれを考えると共に、現実に看取った義母の病床から天寿を全うするまでの様子を、重ね合わせて行きたいと思います。 かかる時さこそ命の惜しからめ かねて亡き身と 思いしらずば 太田道灌 辞世 享年55 道灌(どうかん(=資長(すけなが))のこの歌は、道灌の政治・軍事・文化力などの優れた能力に脅威を感じた主君・上杉定正(=扇谷定正(おおぎがやつ さだまさ))が、彼を罠に嵌めて暗殺した時のものです。 風呂上りの道灌を刺客が槍で刺した時、刺客は道灌の優れた歌の才能を知っていて上の句を詠みました。それが「かかる時さ…