1922年(大11)金剛社刊。松本泰秘密小説著作集第2編。ロンドンの古い趣のある一軒家に住むことになった日本人家族の物語。書き下ろしの出版と思われる。中間部にこの屋敷にまつわる恋愛がらみの別個の物語がまるで枠物語のように組み込まれている。筆者自身は6年ほど英国留学しており、作品でもロンドンの地理を細かく描いている。(一般の読者はそこまでロンドンの街路に詳しくない。)表題で「呪いの家」というほど家が怪奇でもなく、推理を働かせるほどの謎でもないが、恋愛感情の変化や推移の機微の描写に傾斜しがちで、謎解きが行き当たりばったりになるのは、刑事や探偵ではない人物を描いたためだろう。☆☆ 国会図書館デジタル…