死ぬ大事忘れるほどに秋澄めり (山梨県市川三郷町 笠井彰) 秋の澄んだ空気に浸っていると、生死すら忘れてしまうほど。今朝の朝日俳壇の入選句より。 イムジン渡河五歳の秋や今元気 (新宮市 中西洋) 敗戦後の朝鮮半島での逃避行を詠んでいる。時はすでに秋、五歳の子どもが親に手を引かれてイムジン川を渡り、米軍統治下の南朝鮮にたどり着いた。多くの邦人が満州や半島北部からの逃避行で命を落としている。生死を分けた渡河だった。 イムジン河(2017年筆者撮影) この句で思い出したのが、月刊『文藝春秋』9月号の城内康信「日本人難民を北朝鮮から救った『神様』」だ。 敗戦時、朝鮮半島にいた70万人の在留邦人が「難民…