架空の存在

リビングでくつろぐ母親と子ども。 「みんながみんな幸せにはなれないのよね。」 その母親は、せんべいを齧りながら、 テレビで流れる鬱々としたドキュメンタリーに説教じみたコメントを呟く。 「なんで、みんながみんな幸せになれないの？」 ポータブルゲームに夢中だった子どもは、 画面から顔を上げて尋ねる。 母親は子供の方をチラと見て、 「あんた、もう宿題終わったの？」と 質問と全く関係のない質問を返す。 子どもは大きくため息をついた。 わざとらしく、反抗の意を込めて。