大正時代の人間が、いったいどうして、どうやって、どんな経路でこんな知識を仕入れたのだろう。 度々思うが、今回のはひとしお(・・・・)である。 クスリに関することどもだ。 もちろん「麻」のつく方である。 柴田桂太が書いていた、ベニテングダケでトリップするロシア人の姿について――。 (Wikipediaより、ベニテングダケ) 大正十一年に草された『嗜好品』なる小稿だ。なんでも「之を使用するのは北緯六十度以北のシベリアに住する東部ヤク、サモエード、ツングース、ヤクート、カムチャダールの諸族である」と。 用法はまず十二分に乾燥させて、幻覚作用を強めたあとにアサマブドウの果汁をふりかけ、掻っ喰らう。「食…