栞と嘘の季節 (集英社文芸単行本) 作者:米澤穂信 集英社 Amazon 前作『本と鍵の季節』の時から『嘘』は通底したテーマではあったが、今作は特に嘘が多く、登場人物全員が何かしらの嘘を吐いている。ただその嘘の大半は「情報を持っているのに個人的な事情から話したくないから嘘を吐いて隠している」という内容であり、これは事前の行動や台詞の矛盾から真実を暴くというミステリとしてのカタルシスを与えながら、嘘を見破ることで新たな情報が出てきて話を展開させるという役割として使われている。 すなわちミステリとして、あるいは物語として役割を持たされた上で嘘を抱えているわけだが、しかしこの嘘つきたちの中で一人だけ…