ウルリッヒ・ベックの「リスク社会論」(1986)は現代社会の予兆を描いていたといえる。科学技術の拡大とコモディティ化が進行した20世紀後半に、リスクは変容した。 いわゆる成長と発展への巨大な制動力として急速に拡散したのだ。 公害を思い出そう。日本は発祥の地の一つだった。四日市喘息、水俣病等々と各地で工場廃棄物が人々の健康を損ねていった時代。それを「地球温暖化」や「PM2.5」と比べてみよう。 地域の枠を飛び出して、地域と国境、そして海すらも越境している。すなわち危源あるいはリスクは閉じ込められるものではなくなっている。 地球環境問題という総称がかつての公害を圧倒した存在感を持つようになっている…