(本書の犯人等に言及していますので、ご注意ください。) 1960年は、横溝正史の書下ろし長編ミステリが三編も発表されている。いずれも東京文藝社から刊行されていた「続刊金田一耕助推理全集」に収録されたもので、第1巻が『スペードの女王』(6月)、第2巻が『支那扇の女』(7月)、第3巻が『壺中美人』(9月)と続いて、第4巻は『扉のかげの女』だったが、これは翌年1月の出版だった。 この「全集」は第5巻が『霧の山荘/女の決闘』(1961年1月)で、この巻までは、新作長編または中編を目玉にしていたが、第6巻『悪魔の手毬唄』からは既刊長編に変わって第10巻『獄門島』(1961年5月)で終了したらしい[i]。…