(本書の真相等を明かしています。あと『犬神家の一族』、『仮面舞踏会』についても、トリック等に触れていますので、ご注意ください。) 『悪霊島』は、言うまでもなく、横溝正史の遺作となった長編小説である。1979年から翌年にかけて連載され、1980年7月には単行本が刊行された[i]。空前の横溝正史ブームのさなかに連載刊行され、大きな話題を呼んだ。その余韻が残るなか、翌1981年12月に横溝は逝去している。享年79歳、現在なら長命というほどでもないが、現役ばりばりの作家のまま生涯を終えた稀有なひとりといえるだろう。 しかも、横溝は本書に対して、意外なほどといっては失礼だが、大きな手ごたえを感じていたら…