(本書の犯人等のほか、『白と黒』、『仮面舞踏会』、『病院坂の首縊りの家』、『悪霊島』の犯人にも触れています。またジョン・ディクスン・カーの『囁く影』を比較対象にしていますので、未読の方はご注意ください。) 『悪魔の降誕祭』[i]は、1958年1月に雑誌発表された後、7月に書下ろし長編として公刊された横溝正史の長編ミステリである。この時期に数多く書かれた中短編の長編化作品のひとつで、しかし、分量的に長編になるのか、中編なのか、微妙なところといえる。原型版[ii]は比較的長めの短編ないし中編で、約三倍に改稿された[iii]というが、短編に加筆して中編にしたというべきか、中編を長編化したというべきな…