(本書のトリックのほか、エラリイ・クイーンの『エジプト十字架の謎』、さらにE・フィルポッツ『赤毛のレドメイン家』、S・A・ステーマン『六死人』、江戸川乱歩「石榴」、アガサ・クリスティ『アクロイド殺し』、ついでに「黒猫亭事件」のトリック、アイディア等を明かしていますので、これら諸作を未読の方はご注意願います。) 真珠郎はどこにいる[i]。 あまりにも有名な呼びかけで始まる本書は、1936年10月号から翌年2月号まで『新青年』に連載され、4月には六人社から単行本が出版されたという[ii]。江戸川乱歩の序と作者の序文およびエッセイ「私の探偵小説論」が収録され、それ以外にも題字が谷崎潤一郎、口絵は松野…