(本書の犯人、トリック等のほか、坂口安吾『不連続殺人事件』、アガサ・クリスティ『ナイルに死す』のトリックに触れていますので、ご注意願います。追記:不正確な部分がありましたので、修正しました。2024年1月21日。) 『迷路荘の惨劇』(1975年)[i]は、改稿魔とでもいうべき横溝正史が、最後から三番目に発表した長編ミステリである。原型は、昭和31年(1956年)に雑誌掲載された「迷路荘の怪人」[ii]で、それを中編に書き伸ばした同名作品[iii]が、昭和34年(1959年)になって、東京文藝社から『金田一耕助推理全集5』として刊行された模様だ[iv]。『惨劇』は、中編版「怪人」を更に長編に引き…