学部三年の冬に書いたものです。一つの作家の映画を三つ以上見てそれらについて論じる、という課題でした。ちょっとレトリックを覚えたのかもしれない。 「私が長らく不満だったのは、映画であれば画面にラジオもステレオも音楽家も見えないにもかかわらず、然るべき時に妙なる音楽が流れ登場人物たちはいとも簡単に甘美な気分に入り込めるのに、現実生活においてはそういう風にうまく音楽が流れはしないことなの。」 ——松浦理英子『セバスチャン』 現実と映画はいったい何が違うのか。アンドレ・バザンが提起したリアリズムの問題を「コペルニクス的な革命[1]」と呼んだエリック・ロメールの映画には、大きく分けて二種類ある。ロメール…