経緯 前記事では、ラックの歯部とその歯先形状を見てきました。実際のラックは歯部と隙間部を1ピッチとして、複数ピッチ必要です。そこでこの記事では、後で創成図を作成するために必要なピッチのラックを作成します。 創成図 1ピッチのm1ラック作成 前回のラックの歯部分を、ピッチごとに並べるとラックになります。 ピッチですが、今回はm1なのでで配置していきます。前回は歯の中心に原点をおいていましたが、今回は隙間部分に原点をおいています。 2ピッチのm1ラックFusion360では寸法入力に大文字の「PI」を入れると「3.1415」に変換されるので、等で入力できます。作図してみてお判りでしょうが、標準歯車…
LibreCADを使用して外歯車や内歯車の創成図を描く方法は、LibreCADで外歯車、内歯車、ラック歯車創成図が簡単に描ける(1) - 歯車のハナシ以前の記事]で説明しました。その際は、ピニオンカッタ加工による創成図でしたが、今回は新たにホブやラック工具の創成図を作成する方法も紹介します。以下の図は、新しいホブ創成図作図方法(左)と従来の方法(右)を比較したものです。両方法はほぼ同様ですが、左の図ではホブ加工をピニオンカッタで近似した作図法が用いられています。さらに、LibreCADだけでなくQCADでも同様の作図が可能であることが確認されました。合わせて説明します。 図1.今回提案の方法と…
LibreCADで外歯車、内歯車、ラック歯車創成図が簡単に描ける(1) - 歯車のハナシ では、ピニオンカッタからラック歯車が作れると言いました。言い換えると、歯形から工具形状を導いたことになります。また、 CADで正確なインボリュート歯形と歯元隅肉曲線を描く - 歯車のハナシ を始めとするシリーズでは、ラック工具の形状から歯形を求める方法を紹介してきました。ということは、①工具形状から完成品歯形を求める、②完成品歯形から工具形状を求める、の双方が可能になったことを意味します。そこで、角型スプラインをテーマに、そのホブ形状を求め、ホブ形状から元の角型スプラインを作成してみました。 図.今回の実…
LibreCADの2回目です。1回目のラックに引き続き、外歯、内歯のピニオンカッタによる創成図を作っていきます。 図.ピニオンカッタによる創成図
LibreCADというオープンソース 2D-CADを試していたら、標準の機能だけで外歯車、内歯車、ラック歯車の、ピニオンカッタによる創成図が簡単に描けることが分かりました。 図1.
「CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(1),(2),(3)」で、内歯車の作図方法を提案してきましたが、検証をしていません。実機確認はちょっと難しいので、「内歯車の創成加工をFusion360でやってみた」の方法で確認しました。
なんとなく、内歯車の歯元隅肉曲線のでき方が分かってきたのですが、これを数式で表すことを考えてみました。 座標変換による方法 CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(1)~(3)」では、ピニオンカッタを自転後、内歯車素材の回転を打ち消す方向に公転運動させて、創成運動を求めました。また、ピニオンカッタの歯先丸み中心の軌跡をオフセットすることで、内歯車の歯元隅肉曲線を得られることが分かりました。その過程を順次数式化していきます。 中心軸の異なる回転移動の式 上述の創成運動は、ピニオンカッタ軸周りの回転移動と内歯車素材軸周りの回転移動という、回転中心の違う2つの回転移動を行っていますが、それを数…
前回作成した内歯車の完成品、創成アニメーションを紹介します。また、第1回目で歯形データから歯先丸み中心を求めましたが、計算で求める方法についても紹介します。 前回の完成品 「CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(2)」によって作成した歯形形状で得られた3Dモデルが下図です。前々回のような無用な歯筋線もなく、きれいにできています。 図.3Dモデル完成品 創成アニメーション 下図は、ピニオンカッタの自転が進む様子と、内歯車の形状を創成していく様子のgifアニメーションです。右端から次々と登場する歯面は、ピニオンカッタの左歯面を、円とインボリュート曲線で表現したもので、ピニオンカッタ軸周りを…
経緯 このブログでは、「CADでラックから歯車創成図を書いて3Dモデル化する(2)」で、CADのオフセットを使うと歯元隅肉曲線が書けることに気づき、以降の記事ではインボリュート歯車の歯元隅肉曲線の算出に使用してきました。 具体的には、ラックの歯先丸み中心の軌跡をCADまたは計算で求めて、その曲線を、ラック歯先丸み半径分オフセットさせると歯元隅肉曲線が得られます。 原理として包絡線と一致するのは当然なので、疑いを持っていなかったのですが、実は精度が期待していたレベルと違いました。その検討をおこなったので結果を公開します。 問題点 発端 冒頭の通り歯元隅肉曲線を求める際に、CADのオフセットを使用…
ジョイント機能付きFusion360用歯車作成アドイン「igears2.0」に創成図およびインボリュート曲線、歯元隅肉曲線出力を追加しました。その概要を紹介します。なお、対象は標準平歯車および転位平歯車です。 図1.創成図出力 igearsとは Autodesk社のCADソフトウェアである「Fusion 360」で使用できる、無料の歯車モデル作成アドインについて説明します。このアドインは、歯車のモデルを簡単に作成するためのツールセットで、以下の主要な機能を提供します:1. 歯形作成: 歯車の歯の形状を簡単に作成できます。 2. 外歯車と内歯車: 外部歯車と内部歯車のモデリングが可能です。 3.…
今回は創成図の結果を利用しながら、「離散的」ではなく「連続的」に歯形と歯元隅肉曲線をCAD作図だけで求める、という内容です。出来栄えは、歯車アドインで作ったものと同等で、まったくそん色ありません。 経緯 「創成図から歯形の成り立ちを理解する(1)」で、歯元隅肉曲線が、ラックの歯先丸み中心軌跡のオフセット曲線と一致することを確認しました。この方法は、複雑な計算式を用いることなく、CAD機能(図形の作図と移動、回転およびオフセット曲線)だけで歯元隅肉曲線を作図可能な方法です。いっぽう、インボリュート曲線のほうは従来からCADによる作図方法は知られています。この両者を組み合わせることで、正確な歯形が…
経緯 今回は、創成図からインボリュート歯車各部の成り立ちを理解するというテーマです。これが一番書きたかった内容なのですが、順を追って説明してこないと、なかなか理解が難しそう、ということで今までラック、創成図の書き方について記事にしてきました。 これで、なぜ歯車の歯元隅肉部があんな形をしているのかを分かってもらえたら嬉しいのですが。関連する過去記事は次の通りです。 CADで歯の曲げ危険断面と歯形係数を求める CADでラック歯形を作る(1) CADでラック歯形を作る(2) CADでラックから歯車創成図を書いて3Dモデル化する(1) CADでラックから歯車創成図を書いて3Dモデル化する(2) 準備 …
前回は創成図を書くところまできました。今回はそれをつかって3次元モデルを作り、igears2モデルと比較します。 3Dモデル化 断面作成 スケッチで創成図の外周を閉じます。マウスオーバーすると青に変化するようになるとOKです。ならないときはどこかオープンになっています。 スケッチで1歯分を作成するため、左右に180/歯数/2=4.5°の半径線を作成し、創成図の歯底部分に接続します。マウスオーバーしたとき、歯の形状で濃い青が浮かんだら、形状はOKです。 図11.押し出し用の準備 「押し出し」で歯の部分を選択して、深さ入れて実行すると1歯のモデルが完成します。 図12.3Dモデルさらに残り19歯を…
(24.01.01追加修正) 前回の記事「正しくない内歯車」 では、内歯車を凸歯面で作成しているサイトがありますが、正しくは凹歯面です、という内容でした。今回は、内歯車でよくあるもう一つの間違いとして「頂隙(相手歯先とのクリアランス)」の有無について記載し、それを設けることによって、「正しい作り方」というタイトルにしていますが、厳密に正しい歯形ではありません。もう少し厳密に「正しい内歯車の作成方法」を望まれる読者の方は、当ブログの次の記事をお勧めします。CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(1) - 歯車のハナシ CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(2、正確な歯形) - 歯車…
(こちらの記事も合わせてご覧ください。「 CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(1)」) 質問です 次に示す2つの遊星歯車のうち、どちらが正しい内歯車でしょうか。 Aタイプ:内歯車が凹歯形 Bタイプ:内歯車が凸歯形 正解は「Aタイプ:内歯車が凹歯形」です。 Bタイプを登場させた理由は、Bタイプで作り方を説明しているYoutube動画があるからです(割と有名どころで登録者数2.6万人)。Autodesk社公式ストアの歯車アドインの中にも、このタイプがあります。 正しくない内歯車の作り方 その作り方を下図に示しますが、機構学における歯面の成立性条件を無視したものになっています。 Bタイプ作…