心から 常世《とこよ》を捨てて 鳴く雁を 雲のよそにも 思ひけるかな 中秋の十五夜 源氏の君を囲んで過ごす。惟光の歌🌖 〜自分から故郷である常世を捨てて 旅の空に鳴いて行く雁を ひとごとのように思っていたことよ。 【第12帖 須磨 すま】 初雁《はつかり》は 恋しき人の つらなれや 旅の空飛ぶ声の悲しき と源氏が言う。 良清《よしきよ》、 かきつらね 昔のことぞ 思ほゆる 雁はそのよの友ならねども 民部大輔《みんぶたゆう》惟光《これみつ》、 心から 常世《とこよ》を捨てて 鳴く雁を 雲のよそにも 思ひけるかな 前右近丞《ぜんうこんのじょう》が、 「常世《とこよ》出《い》でて 旅の空なる かりが…