水俣病が公害による病気であり、被害者救済が不十分であって、長きに渡って掘り起こし検診、裁判闘争や署名活動が取り組まれている認識はあった。しかし、歴史的経過、臨床症状や研究結果、そして何より、官学産による組織的、かつ恣意的な疫学的調査研究等の不備により被害が拡大した経過に憤りを禁じ得ない。今なお、診断基準等の壁により救済されない被害者が多数おられることに衝撃を受けた。また同時に、医療専門職として、また神経系のリハビリテーションにかかわるセラピストとして、自身の不勉強に大いに反省させられた。 著者の高岡滋氏は神経内科の専門医として、また臨床家として35年以上の長きに渡って被害者に寄り添い、掘り起こ…