(本書のほか、『蜘蛛男』の犯人について触れています。また、横溝正史の某短編小説についても同様ですので、ご注意ください。) 昭和8年12月から翌年11月まで『キング』誌上で連載された『妖虫』(1933-34年)は、第二回目の(に、二回目!?)休筆期間を経て、江戸川乱歩が再び探偵小説文壇に戻ってきた記念すべき「第二作」である。 では、復帰第一作は?そう、もちろん『悪霊』である。 同長編は、『新青年』昭和8年11月号から華々しい宣伝文句に飾られて連載開始し、しかし、わずか三か月で敢え無く玉砕した。 そして『悪霊』といえば、そう!言わずとしれた、横溝正史による「乱歩罵倒事件」である。 「二年間の休養を…